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Babel Street

人身取引調査能力の強化

人身取引は、想像を絶するほど蔓延しています。国連は人身取引を「力、詐欺、または強制を用いて」労働目的で人を「募集、輸送、または収受」する行為と定義しています[1]。FBIは、これが世界で3番目に多く発生している犯罪であると考えており[2]、世界中で推定2,490万人の被害者がいるとされています[3]。実際、公認AMLスペシャリスト協会(ACAMS)の推定によると、人身取引業者は4秒に1人の割合で新たな被害者を奴隷化しています[4]。人身取引による不法収益は、年間1,500億ドルに上ります[5]。

この問題は極めて深刻であり、183カ国以上が国連の「人身取引の防止、抑圧及び処罰に関する議定書」を批准または加入しています[6]。また、国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット8.7では、「強制労働を根絶し」「現代の奴隷制を終結させる」ための「即時かつ効果的な措置」を求めています[7]。

人身取引の規模と深刻さを考えると、この犯罪の起訴率が絶望的に低く、有罪判決率がさらに低いという事実に違和感を覚える人もいるでしょう。米国国務省の「人身取引報告書」によると、調査対象となった188カ国において、2024年に司法制度が起訴した人身取引業者はわずか約15,791人でした[8]。有罪判決を受けたのは8,000人未満です。さらに、国連薬物犯罪事務所(UNODC)によれば、毎年調査対象となる人身取引業者のうち、起訴に至るのは10%未満に過ぎません[9]。

人身取引:世界的な人権侵害

人身取引業者は世界中の脆弱な人々を脅かしており、極度の貧困の中で暮らす人々、強固な家族や社会的ネットワークを持たない人々、政治的に混乱または不安定な地域に住む人々、そして自然災害に苦しむ人々を標的にしています。特に子供は標的になりやすく、国連薬物犯罪事務所の推定では、人身取引の被害者の20%が子供です[10]。社会的または政府によるセーフティネットの欠如により、人身取引の被害者が行方不明者として報告されることすら稀です。

被害者は通常、以下の目的で取引されます。

性的搾取

取引された女性や子供は、多くの場合、性労働を強要されます。これには、売春、ポルノグラフィー、ストリップクラブでのダンスのほか、売春組織の隠れ蓑として機能する「スパ」や「マッサージパーラー」での労働が含まれます。多くの子供の被害者が、児童性的虐待コンテンツの題材として利用されています。

人身取引業者はどのように被害者を調達するのか

人身取引業者は、被害者を調達するために様々な手口を用います。あるビジネスマンが貧しい村を訪れ、若者たちにアジアの大都市での良い仕事を約束します。若者たちは彼に従って出国します。目的地に到着すると、ビジネスマンは彼らのパスポートを没収します。彼は若者たちに対し、偽造電子機器を製造する搾取工場(スウェットショップ)で、無給またはわずかな賃金で1日18時間働くよう強要します。また、ある売春組織のボスは、メキシコと米国の無人国境検問所を監視するために悪党を雇います。彼らは、不法入国を試みる若い女性が現れるのを待ち伏せします。そして、犯罪者たちは売春組織で利用するために彼女たちを誘拐するのです。さらに、ある人身取引業者は、飢饉に苦しむ国の絶望した親たちに対し、西ヨーロッパで養親を見つけることで子供たちのより良い生活を保証できると説得します。親たちが親権を放棄すると、子供たちは児童性的虐待コンテンツの題材として利用されます。

現実世界での活動に加え、人身取引業者は現代のソーシャルメディア・プラットフォーム、出会い系サイト、求人サイトを網羅的に検索し、潜在的な被害者を探し出します。FBIによると、人身取引業者はソーシャルメディアやビジネス特化型サイトに、合法に見えるよう慎重に言葉が選ばれた求人広告を掲載して被害者を募集しています。彼らは出会い系アプリで潜在的な被害者を口説き、「恋人」に会いたいと願う女性を自分たちが巣食う地域に出国させ、そこで売春組織や強制労働の罠にはめるのです[13]。

人工知能(AI)の台頭により、オンラインでの人身取引はさらに容易になりました。米国国務省によると、人身取引業者はAIのソーシャルメディア監視機能を活用して、脆弱な個人や集団を検索しています[14]。今やAIは、犯罪者がより洗練された雰囲気の「求人広告」や標的となる被害者の心に強く響く広告を作成して翻訳するうえで、中核的な役割を果たしています。チャットボットが、「応募者」が抱く雇用に関する質問に対し、安心感を与えるように回答します。人身取引業者が作成するディープフェイク動画が、清潔で明るい工場で楽しく働く、幸せで健康的な従業員の姿を描き出し、潜在的な被害者の不安をさらに和らげます。

人身取引調査の課題

世界中の様々な機関が人身取引を調査しています。これらには、FBI、英国国家犯罪対策庁(NCA)、王立カナダ騎馬警察(RCMP)、オーストラリア連邦警察(AFP)などの国家法執行機関が含まれます。FBIをはじめこれらの機関の多くが、人身取引専門のタスクフォースを設置しています。国連薬物犯罪事務所(UNODC)がこれらの機関と連携し、人身取引を阻止するための国境を越えた世界的な取り組みを支援しています。税関および国境警備の担当者も、潜在的な人身取引業者や被害者を水際で発見しようと努力しています。ところが彼らは皆、同様の調査上の課題に直面しています。

冒頭でも触れたとおり、人身取引は発見が困難で、それゆえに起訴することも困難な犯罪です。その理由として、まず、人身取引業者は「行方不明者」として報告されることさえない脆弱な人々を標的にします。第二に、人身取引業者の手口はますます巧妙化しており、法執行機関が潜入して解体することが困難な、高度に組織化されたネットワークを構築しています。人身取引業者がダークウェブを利用するため、人身取引ネットワークの解明がはますます困難になっています。ダークウェブ上のサイトはアクセスが極めて困難であることで知られており、これが人身取引の検知を難しくし、人身取引ネットワークの全容解明や追跡を困難にしているのです。

人身取引の国境を越える性質は、起訴に向けてさらなる課題を生み出します。人身取引組織は、複数の国、管轄区域、および法制度にまたがる可能性があります。人身取引の実行において、複数の言語が使用される場合もあります。また、地域の慣習が、犯罪と文化の境界線を曖昧にすることがあります。例えば、一部の地域では児童婚を人身取引とみなしますが、他の文化ではこの慣習を容認しています[15]。

個人を特定する能力の不足により、法執行機関が誤った人物を逮捕してしまうこともあります。捜査官が、人身取引の被害者である農業労働者を不法移民と勘違いするケースが多発しています。性的搾取の目的で取引された女性が、売春婦と誤認されることもあります。被害者ではなく、犯罪者として扱われてしまうのです。

最後に、人身取引は極めて過少に報告されている犯罪です。報復への恐怖、法執行機関への恐怖、そして自身の窮状に対する羞恥心から、往々にして人身取引の被害者が助けを求めることをためらう場合があるからです。当然ながら、法執行機関が把握していない事件を調査することは不可能です。

リスク・インテリジェンスによる検知能力の向上

法執行機関は、リスク・インテリジェンスを利用して、人身取引業者やその活動を発見するうえでの課題を軽減できます

リスク・インテリジェンスとは、公開情報(PAI)および商用情報(CAI)を検索、収集、統合、分析することによって得られるオープンソース・インテリジェンス(OSINT)の一種です。AI駆動型のリスク・インテリジェンス・プラットフォームは、調査担当者を以下の点で支援します。

人身取引業者の発見。

調査担当者はリスク・インテリジェンス・プラットフォームを使用して、ソーシャルメディア、出会い系アプリ、ビジネス特化型プラットフォーム、掲示板などを調査して、人身取引活動を示唆する可能性のある投稿や広告を探し出せます。例えば、最近自然災害に見舞われた開発途上国の市民を標的とした、不審なほど高給な家事労働の求人広告が連続して掲載されている場合、それは人身取引業者が活動している兆候と考えられます。

調査担当者は、これらのサイトを検索して、他の種類の人身取引活動に特有の言葉遣いを探すこともできます。例えば、「デイスパ」や「マッサージパーラー」の広告に過度に性的な表現が使用されている場合、その施設が売春組織の隠れ蓑として機能している可能性があります。 

リスク・インテリジェンスと法執行機関の機密情報を組み合わせると、人身取引活動の阻止に役立ちます。以下の例を考えてみましょう。カンボジアの少女や女性は、強制結婚の目的で中国に拉致されることがよくあります[18]。もしリスク・インテリジェンスや法執行機関の機密情報によって、同一の男が定期的に数人の若い少女を連れてプノンペンから北京へ渡航し、北京大興国際空港近くのホテルを予約し、毎回1泊しか滞在していないことが判明した場合、法執行機関は彼の活動が人身取引の調査対象になると判断するかもしれません。同様の情報は、調査担当者が人身取引のホットスポット(多発地域)を特定するのにも役立ちます。 

人身取引ネットワークの解明。

法執行機関は、オンライン上のつながり、通信、金融取引、デジタルフットプリントを分析することで人身取引ネットワークを発見し、その全容をマッピングできます。

被害者の救出。

法執行機関は、リスク・インテリジェンス・プラットフォーム上でソーシャルメディア・プラットフォームやその他のサイトを監視し、隠語による救難信号を探すことで被害者を発見し、救助できるようになります。

公判維持活動の強化。

リスク・インテリジェンスから、人身取引業者を起訴し、人身取引ネットワークを解体するための貴重な証拠を入手することができます。通信記録や広告などのデジタル証拠を収集すれば、当局はさらに効果的に公判を維持することができます。

意識向上。

人身取引の傾向や手口に関するリスク・インテリジェンスは、啓発活動に活用できます。個人が自身の安全を守るうえで成長したり、政府機関が進化する人身取引の手口に遅れを取らない戦略を策定しやすくなったりするからです。

人身取引のネットワーク

「人身取引業者(Trafficker)」または「ヒューマン・トラフィッカー」は、強制労働や性的虐待の目的で他の人間を奴隷化する人々を表すために最もよく使われる言葉です。しかし、人身取引を可能にしている犯罪者にはいくつかのカテゴリーが存在します。

リクルーター(募集役)は、現実世界またはオンラインで潜在的な被害者を特定して接近し、搾取可能な状況へと誘い込みます。彼らは、罠にはめた人数に応じて報酬を受け取ることがあります。

トラフィッカー(取引業者)は、詐欺、欺瞞、強制などの手口を用いて、強制労働や性労働に利用する目的で被害者を輸送し、収受することに直接関与する人々です。

ファシリテーター(支援役)は、人身取引業者に後方支援を提供する犯罪者です。彼らは、輸送手段の手配、セーフハウス(隠れ家)の提供、人身取引の兆候や事例を見逃すよう当局者に賄賂を贈る、そして人身取引で得た資金のマネーロンダリングなどを行います。

Babel Streetが提供する支援

検索可能なデータの量は2年ごとに倍増しています。法執行機関は、人身取引を発見し阻止するために必要なインサイトを得るために、どのようにしてこの膨大なデータを収集し、分析できるのでしょうか。

Babel Streetのリスク・インテリジェンス・プラットフォームは、何千ものオンライン情報源から構造化データおよび非構造化データを迅速に集約する、ミッション特化型のデータおよび分析システムです。Babel Streetのプラットフォームは、高度なAIを活用してテラバイト単位のオンラインデータを分析し、人身取引に関するインテリジェンスを抽出します。これには、サーフェスウェブ、ソーシャルメディア・プラットフォーム、主要メディアのサイト、および政府ドメインに由来するデータが含まれます。何十もの言語に対応し、検索結果をユーザーが選択した言語に翻訳する能力は、業界でも類を見ないBabel Streetの特長です。常時監視機能によって、ユーザーがアクティブに操作していない場合でも検索を実行し続け、新たな情報が発見されるたびに各検索語句にその情報を追加します。

Babel Streetでは、標準的な検索エンジンではアクセスできないウェブサイト、「ダークウェブ」を検索でき、調査能力がさらに向上します。ダークウェブへのアクセスに用いられるツールでは基本的に匿名性が保証されるため、人身取引をはじめとする違法行為の温床となっています。調査担当者は、ダークウェブ検索機能を活用して、他の手段ではアクセス不可能な情報を迅速かつ効率的に発見することができます。

さらにBabel Streetには、調査担当者が人身取引ネットワークの実態をより深く理解するための機能があります。それが、ソーシャルネットワーク内における重要な関係性を迅速にマッピングする機能で、何百、何千に及ぶ関係性を自動的に調査し、これまで知られていなかった隠れたつながりを明らかにするとともに、最も強い影響力を持つ関与者を特定します。グラフ化された明確な視覚的表現により、法執行機関はこれらの複雑な関係性を直感的に把握し、理解することができます。

こうした調査において、匿名性の確保は極めて重要です。法執行機関の担当者は、捜査の事実を人身取引業者に察知される事態を避けなければならないからです。Babel Streetは保護された仮想環境を提供しており、調査担当者は自組織のインフラを危険にさらしたり、自身の身元を露呈したりすることなく、オンライン上の情報源を安全に分析できます。国境を越えた人身取引組織を追跡する調査担当者には、世界中のアクセス困難なサイトや海外からのアクセスを遮断しているサイトに対する、安全かつ匿名化されたアクセス経路(イングレス/イーグレス)が提供されます。

Babel Streetによって、法執行機関は、人身取引の募集手口、募集広告、ネットワーク、犯罪パターンを検知するために不可欠なインサイトを効果的に獲得できるようになります。こうした機能は、法執行機関をはじめとする関係者が人身取引業者を特定し、彼らの活動を阻止するために公判を強力に維持していくうえで、極めて重要な役割を果たします。

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FAQs

国連は人身取引を、「力、詐欺、または強制を用いて」労働目的で人を「募集、輸送、または収受」する行為と定義しています。

Endnotes

1. United Nations Office on Drugs and Crime, “Human Trafficking,” accessed April 2024, https://www.unodc.org/unodc/en/human-Trafficking/Human-Trafficking.html

2. Federal Bureau of Investigation, “Public Service Announcement: Human Traffickers Continue to Use Popular Online Platforms to Recruit Victims,” March 2020, https://www.ic3.gov/Media/Y2020/PSA200316

3. Ecker, Emm: “Breaking Down Global Estimates of Human Trafficking: Human Trafficking Awareness Month 2022,” Human Trafficking Institute, January 2022, https://traffickinginstitute.org/breaking-down-global-estimates-of-human-trafficking-human-trafficking-awareness-month-2022/#:~:text=24.9%20million%20victims%20of%20human%20trafficking&text=The%2024.9%20million%20figure%20includes,every%20region%20of%20the%20world.

4. Krupena, Silvija, “Human Trafficking: Detection and Investigations,” ACAMS Today, January 2023, https://www.acamstoday.org/human-trafficking-detection-and-investigations/

5. Ibid

6. United Nations, “Protocol to Prevent, Suppress and Punish Trafficking in Persons, Especially Women and Children, supplementing the United Nations Convention Against Transnational Organized Crime,” November 2000, https://www.ohchr.org/en/instruments-mechanisms/instruments/protocol-prevent-suppress-and-punish-trafficking-persons

7. United Nations Sustainable Development Goals, accessed April 2024, https://www.unodc.org/roseap/en/sustainable-development-goals.html#:~:text=Target%208.7%20%2D%20Take%20immediate%20and,labour%20in%20all%20its%20forms

8. U.S. Department of State, “2025 Trafficking in Persons Report,” accessed January 2026, https://www.state.gov/reports/2025-trafficking-in-persons-report/

9. United Nations Office on Drugs and Crime, “Global Report on Trafficking in Persons 2024,” accessed January 2026, https://www.unodc.org/documents/data-and-analysis/glotip/2024/GLOTIP2024_BOOK.pdf 

10. Ibid

11. Qian, Isabelle, “7 Months Inside an Online Scam Labor Camp,” The New York Times, December 2023, https://www.nytimes.com/interactive/2023/12/17/world/asia/myanmar-cyber-scam.html

12. Jackson, Will, “US Trafficking in Persons report says Cambodian officials complicit in human trafficking for online scams,” Australian Broadcasting Corporation, June 2024, https://www.abc.net.au/news/2024-06-27/us-report-cambodia-complicit-human-trafficking-online-scams/104020954

13. Federal Bureau of Investigation, “Public Service Announcement: Human Traffickers Continue to Use Popular Online Platforms to Recruit Victims,” March 2020, https://www.ic3.gov/Media/Y2020/PSA200316

14. U.S. Department of State, “2025 Trafficking in Persons Report,” accessed January 2026, https://www.state.gov/reports/2025-trafficking-in-persons-report/

15. U.S. Citizenship and Immigration Services, “Forced Marriage,” accessed April 2024, https://www.uscis.gov/humanitarian/forced-marriage

16. U.S. Department of State, Trafficking in Persons Report, June 2023, https://www.state.gov/reports/2023-trafficking-in-persons-report/

17. Ibid

18. Human Rights Watch, “World Report 2024: Cambodia Events of 2023,” accessed April 2024, https://www.hrw.org/world-report/2024/country-chapters/cambodia#:~:text=In%202023%2C%20the%20Office%20of,%2C%20South%20Asia%2C%20and%20China.

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