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OSINT・公開情報

OSINTエージェントシステム開発のための3つの指針

増大するデータ、増加する問題

オープンソースインテリジェンス(OSINT)の領域はかつてないほど広範かつ深遠で豊かになっていますが、この日々拡大する情報の海を前にして、迅速かつ実用的な知見を得るために様々なシグナルを選別する既存の手法に、重大な問題があることが露呈しています。既存のツールはアナリストが広く情報を検索し、大量のデータを入手できる一方、重要な情報を特定し、検証し、結果を統合するプロセスは依然として労力を要します。アナリストは手がかりを追跡し結論を導くよりも、システム管理や誤情報や無関係な情報の選別に多くの時間を費やすことが多くなっています。

検索拡張生成(RAG)システムは関連情報を迅速に抽出する点で人気を集めていますが、既存のワークフローとは独立して動作します。アナリストは依然として、多様なOSINTデータソースから検索を構築し、結果を解釈し、真実を見極めていく必要があります。既存システムでもこうした目標を達成できますが、このプロセスには相当な時間を要し、いかに短時間でインサイトを取得し意思決定できるかが重要な環境において、実用的なインサイトの取得が遅れてしまいます。

堅牢なエージェントシステムの設計

AIエージェントは、こうした問題への解決策として幅広い応用分野で注目を集めています。アナリストが使用するツールと直接的に連携することで、手作業の大部分をAIエージェントが処理し、時間を短縮し、使用するリソースを最小限にしながら決定的な知見を得られます。今後数年間でその導入は急速に拡大しますが、どの程度の価値が得られるかは実装の巧拙だけでなく、その関与の仕組みをどのように設計するかによっても変わってきます。

多くのアナリストのワークフローにおいて、AIソリューションの導入障壁が存在します。具体的には、アナリストがAIソリューションをいかに信頼できるかという点です。企業は一般的な精度に関する指標を評価することはできても、ベンチマークだけでは、人々がこれらの新しいツールを使用する意欲を高めるには限界があります。

AIエージェントは、アナリストが使用する他のツールとは異なります。堅牢なエージェントフレームワークが、ユーザーの代わりに既存のツールやインフラと半自律的に連携できるという点で、これらは革新的な存在です。堅牢なエージェントシステムは、こちらが与えた指示に従って動作するだけのAPIとは異なり、問題や疑問について「推論」し、適切な戦略とツールを考案し、計画を実行できる一種のアシスタントなのです。

これらの「ツール」の中には、より大きな目標を達成するためにオーケストレーション可能な他のエージェント群(それぞれが特定の専門領域を持つ)が含まれる場合があります。したがって、利用できるツールやアプリケーションの能力が、そのままAIエージェントの能力範囲となります。しかしながら、こうしたツールが一連の原則に従い使用されない(場合によっては制約されない)場合、アナリストとの連携が損なわれ、手法や推論が不透明かつ偏ったものとなり、実際のアナリストの意見が考慮されないリスクがあります。以下に、オープンソースインテリジェンス収集のための自律型システム開発の指針とすべき三つの基本原則を概説します。

意図を理解する

汎用的なユースケースを超えるAIソリューションの有効性は、解決を任された問題のコンテキストと枠組み設定の質によって制限されます。このAIの挙動の整合(アライメント)は、モデルのトレーニングやチューニング、またはプロンプトエンジニアリングによって実現されることが多くなります。これは、動的な性質を有するOSINTワークフローにおいては問題となります。インテリジェンスライフサイクルの従来モデル(計画、収集、処理、分析、伝達)が一般的な枠組みを提供する一方で、アナリストは直感に従い、調査範囲を調整し、長年培った現場の知識やノウハウを駆使することが多々あります。そうした知識やノウハウは、機密情報となっている場合があります。この領域で利用されるエージェント型ソリューションは、持続的な協力者として、「今、何が重要か」を捉え、反復的に確認し続ける能力が求められます。ただし、調査のニーズに関する情報を導き出すことと、アナリストのプロセスの機密性やニュアンスを損なわないこととのバランスを取ることが極めて重要です。

技術的な観点から見ると、現時点における疑問や重要な情報に一貫して根ざしつつも、そこに縛られないエージェントを構築するという課題があります。LLMを活用したエージェントに特有の能力の一つとして、見落とされていたパターンを浮き彫りにし、仮説を提案し、新たな展開を踏まえて理解を再構築しながら、広範なデータセットを横断的かつ迅速に推論する能力が挙げられます。目的はアナリスト自身の直感を代替することではなく、それを増幅・強化することにあります。つまり、アナリストの業務上のニーズを支援するとともに、エージェントを利用しなければ探求することのなかったであろう新たな可能性を提案することにあります。

透明性が鍵

システムがアナリストと適切に連携していると確信しても、その挙動や推論を盲信してはいけません。OSINTにおいてはプロヴナンス(データの生成過程や履歴)が不可欠です。透明性がなければシステムはブラックボックス化し、人間による説明責任が不可欠な状況では、そのようなシステムを利用できなくなるリスクがあります。これは、アナリストがエージェントプロセス全体を通じてエンドツーエンドのトレーサビリティを必要とすることを意味します。具体的には、信頼できる情報の収集、使用されたツール、そしてその情報を処理・分析するために実行された手順に至るまでのプロセスの各項目を追跡可能でなければいけません。つまり、システム内でエージェントによって開始されたあらゆるアクションが完全に記録され、ユーザーに提示される必要があります。また、生成された一つひとつの分析結果やインサイトは、その情報源をたどってマッピング可能である必要があります。

人間の関与

最終的には、結論を導き出し調査を主導するのは人間です。したがって、システムは人間の意図を理解し、分析結果の根拠を示す必要があるだけでなく、特に重要な判断ポイントにおいて、アナリストを積極的に参加させなければいけません。AIの実装がどれほど高度であっても、誤りの可能性は常に存在します。

ユーザー向けに策定された行動計画を事前に確認できるようにすることで、エージェントが実際に望んでいない複雑で長期化する可能性のあるプロセスを開始する前に、アナリストがこれらの誤りを修正しシステムを導くことが可能になります。さらに、アナリストは既存ツールを手動で操作する能力を維持し、特定のワークフローにおいてAIをいつ、どのように使用するかを自ら選択できるようにしなければいけません。エージェント型システムは人間のワークフローに沿って統合されるべきであり、さもなければワークフローが断片化したり過度に制限的になるリスクがあります。ハイリスクなOSINT環境では、アナリストが主導権を確実に握り続けなければいけません。

原則の実践

AIエージェントはワークフローを変革し、OSINTの戦力倍増装置として機能する可能性を秘めており、アナリストがわずかな時間で結果にたどり着けるようになります。しかし、アナリスト自身のニーズを優先する慎重な方法でアナリストのワークフローに組み込まれなければ、誰もこれらのAIエージェントを使い始めることはないでしょう。エージェントは、システムのデータやツールだけでなく、アナリスト自身の意図、判断、責任とも整合していなければいけません。

自律的なツールがますます普及する時代を迎えるにあたり、私たちはエージェントがどれだけのことを実行できるかだけでなく、アナリストの任務遂行をどれほど支援できるかを問うべきです。こうした価値観を念頭に構築されたエージェントシステムは、OSINT業務を拡大するだけでなく、精度を高め、認知的負荷を軽減し、アナリストを最も重要なインサイトへと導くことになります。